第1章:朝5時、吐き気とともに目覚めた
朝5時。目覚ましより早く、吐き気で目が覚める。眠れていないのに、身体が“会社に行くな”と叫んでいる。
でも私は、顔を洗って出社の準備を始めた。
これがもう3ヶ月以上続いている。
──社名は出せない。でも、たぶんあなたの隣にもある。
私はその会社で、”教育係”という名の地獄を経験していた。
その日常は、言葉では言い表せないほどに“普通”を装っていた。
外から見れば、きちんと制服を着て、朝礼に参加し、業務に就いている。けれどその裏側で、私たち新人社員は、毎日少しずつ心を削り取られていった。
「もう、いい加減にしてくれ…」
そう思いながらも、誰に言えばいいのかわからなかった。上司も先輩も、みんな同じ顔をしていたから。
第2章:配属初日、リコは“戦力外通知”を受け取った
「君、期待してるからね」
そう言って配属された私を、教育担当の先輩は完全に無視した。
業務マニュアルは存在しない。 先輩に話しかければ、「自分で調べたら?」 チャットで相談しても、既読スルー。
でも、数日後。 「なんで分からなかったの?」と怒鳴られた。
何も教えられていないのに、“自力で全部完璧にやれ”という世界。
それが、私のブラック企業の始まりだった。
「これが社会だよ」 「甘えるな」
そう言って、何も教えないことを“教育”だと正当化する。
私は毎晩、教科書と業務資料と、ネットで検索した用語集を見ながら、ノートにびっしりメモを書いていた。
誰にも聞けない分、自分だけで埋めなければならなかった。
でも、翌日にはそれらが“間違っている”と切り捨てられる。正解は、結局「先輩の気分」だった。
第3章:昼休憩=なかったことにされる45分間
12時になっても、誰も立ち上がらない。
新卒の私は、恐る恐る「お昼…どうしますか?」と聞く。
「うちは繁忙期だから」「交代で行けるときに行けば?」
結果、私は14時半まで昼休憩に行けなかった。しかも、後から言われる。
「遅くまで飯食ってたら迷惑だよ?」
──地獄は、誰も怒鳴らない時に静かに進行する。
それ以降、私は昼食を抜いた。食べる時間があっても、気が休まらなかった。
食堂では同僚たちが笑っていた。けれどその笑いも、どこかピリピリしていた。
この職場には、“緊張が空気”になっている空間があった。
誰もが何かに怯えながら働いていた。そしてそれが、あまりにも日常に溶け込んでいた。
第4章:日報という名の“懺悔文”
「今日の改善点は?」 「何ができなかったの?」 「誰に迷惑をかけた?」
これらを毎日書かされる日報。
上司からのフィードバックは一切なし。 ただ、翌日の朝礼で「昨日も何も成果なし」と公開処刑される。
私は、自分の存在を否定される訓練を受けていたのだと思う。
「なぜ今日もできなかったのかを、きちんと説明しろ」
それはただの業務報告ではなかった。まるで“罪状”を報告しているような空気。
私は、できなかったことを並べ、自分の弱さを自白し、書類で自己否定を行う日々を送っていた。
日報に「できました」と書くことすら、申し訳ないような気持ちになっていた。
第5章:辞めるという決断に罪悪感を抱くよう仕向けられる
退職を考えると、先輩は言う。
「今辞めたら、ここまで教えた時間がムダになる」 「続かない奴は、どこ行っても通用しないよ?」 「みんな耐えてるよ?」
その“みんな”が、毎週のように辞めていったのに。
辞めることすら、裏切り行為のように仕立て上げる。
誰かが辞めると、残された人間はその人の分まで業務を押し付けられる。
そしてそのことに怒りながら、次に辞めそうな人間を探す。
こうして、全員が全員を疑い、監視し、押しつけ合う環境が出来上がる。
私は、仕事のために働いていたのではない。
恐怖から逃げないために、出勤していた。
第6章:退職代行の番号を押せなかった夜
スマホの画面に「退職代行サービス」の番号を出した。
でも、指が震えて押せなかった。
辞めたくないんじゃない。辞める許可が誰にももらえなかっただけだ。
私は、辞めることが“甘え”だと思い込まされていた。
どんなに疲れていても、「私なんかまだマシ」だと自分に言い聞かせていた。
でも、ある夜。
上司から「なんでミスを繰り返すの?」と詰められた直後、帰宅途中の電車の中で、私は声を出して泣いてしまった。
気づいたら、涙が止まらなかった。
その夜、私は自分のために初めて文字を書いた。
第7章:やばログに投稿した日、私は少し泣いた

「退職代行を出す前に、誰かに話を聞いてほしかった」
その言葉を、私は“やばログ投稿フォーム”に打ち込んだ。
こんな世界があることも、知らなかった。 でも、書いてるうちに、私は少しだけ救われた。
「辞めていい」と書いてあったから。 「生き残れ」と書いてあったから。
誰かの投稿が、私を支えてくれた。
そして、私のこの文章も、誰かを支えるものになればと思った。
終章:読んでくれたあなたへ
あなたが今、同じように悩んでるなら──
「逃げることは、恥じゃない」 「壊れる前に、離れていい」
これは誰かの“決断”ではなく、**あなたが生きるための“権利”**です。
誰かに許される必要はない。 あなたの“これ以上ムリ”は、立派な理由です。
だから今日、まだ退職代行を押せないあなたに代わって、私は言いたい。
「あなたが、無事でいてくれたら、それでいい」
そして、もう一歩踏み出す準備ができたら──
次は、あなたがあなた自身の味方になってください。
心から、そう願っています。
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